特集 快眠のすすめ~質の良い睡眠をとる方法~
ちゃんと寝たはずなのに、日中に眠気に襲われた経験はありませんか? もしかしたら、それは正しい睡眠をとれていないのかもしれません。「睡眠が大切なのはわかっているけど、具体的にどうしたらいいの?」という方に、集中力や記憶力にも影響を与えると言われている「睡眠」について正しく知り、「快眠」するためのポイントをご紹介します。正しい睡眠をとって、大事な試験や仕事にそなえましょう!
睡眠と記憶の関係
睡眠の重要な役割の1つに「記憶の固定」があることは間違いありません。「記憶の固定」とは、日中に得た情報や経験を脳に定着させて忘れないようにすることで、心理学者のジェンキンスとダレンバッハは実験を行い、記憶は常に減少し続けるという「記憶逓減理論」を発表しています。睡眠ありと睡眠なしの2グループに分けた被験者に複数の単語を暗記させ、記憶の定着度を記録しました。すると睡眠ありグループと比較して、睡眠なしグループのほうが記憶の固定がされにくいという結果が出たのです。この結果に対して2人は、睡眠ありグループのほうが「記憶の干渉」が少ないことにより記憶が固定されるという結論を出しました。
「記憶の干渉」とは、記憶した情報同士が互いに影響し合あうことです。起きている限りは常に何らかの新しい情報が入ってきて、先に記憶した情報を脳から押し出してしまいますが、睡眠中は新しい情報が入ってこないので「記憶の干渉」がありません。つまり「記憶の干渉」を避けて「記憶の固定」を促すには、しっかり眠ることが欠かせないのです。
睡眠のメカニズム
そもそも私たちにとって眠りとは一体何なのでしょうか?まずは簡単に睡眠の基礎知識について知ることからはじめましょう。
Q:何のために眠るの?
A :睡眠には身体を休ませるのはもちろんのこと、脳を休ませるという大切な役割があります。脳は非常に燃費が悪い器官で、重さは体重の2 ~ 5%に過ぎないのですが、消費エネルギーは全体の20%以上になると言われています。そんな脳を休ませるのに必要不可欠なのが睡眠という行為なのです。
Q:なぜ眠くなるの?
A:次の2 つのしくみでコントロールされているためです。
●ホメオスタシス(恒常性維持機構)… 身体の状態を一定に保つ機能
外的・内的な環境の変化にも関わらず、体温や血糖値、血液などの生理状態を一定 に保とうとする働きのことで、睡眠に関していえば「疲れたら眠る」がそれにあたる
→ 起きている間に脳に疲れがたまると、睡眠中枢に働きかけて眠気を誘発する
●サーカディアンリズム(体内時計機構)…身体の生体リズムを調整する機能
約24 時間を周期とする内因性のリズムのことで、睡眠に関していえば「夜になると眠る」のがそのひとつ
→ 疲れに関係なく、暗くなると自動的に睡眠ホルモンとも呼ばれるメラトニンが体内時計に働きかけて眠気を誘発する
Q:眠りには種類があるの?
A:睡眠は2 種類に分けられます。
●ノンレム睡眠…脳を休める睡眠→ 主に脳や細胞を回復させる
● レ ム睡眠…脳を育てる睡眠→主に記憶の整理や固定を行う
眠っている時は、ノンレム睡眠とレム睡眠が約90 分周期で交互に現れます。ノンレム睡眠とレム睡眠は、一般的に4 段階に分けられ、段階1 の比較的浅い睡眠から、段階4 の最も深い睡眠まであります。段階4 の最も深い睡眠が現れるのは、眠りに入ってから 3 時間までの間で、この間が最も記憶を固定しやすいと言われています。
ちなみに、レムはREM = Rapid Eye Movement の略語です。眠っている時に、 まぶたの下で眼球が高速で動いていることからこう呼ばれるようになりました。
【快眠Point1】ぐっすり眠ろう!
まずは、私たちが本来的に持っている5つの感覚に分けて、快眠するためのポイントをご紹介します。より良い眠りへの一番の近道は、刺激物を避けて心身共にリラックスすることです。
視覚
睡眠ホルモンのメラトニンは、朝に光を浴びてから14~16時間後に分泌が始まり、午前2時ごろに最も増えると言われています。
メラトニンは目からの刺激に左右されるので、夜は明るすぎない照明を心がけてください。また、パソコンやテレビ、スマートフォンなどブルーライトを発する電子機器の使用はなるべく避けたほうがいいでしょう。
聴覚
完全な無音状態よりも、自然に近い音が流れていたほうが入眠しやすいことが分かっています。規則性と不規則性が調和した「1/f ゆらぎ」と呼ばれるヒーリングサウンドや、α波を放出するクラシック音楽などがおすすめです。
イヤホンではなくスピーカーを使い、少しずつボリュームダウンしていきましょう。なお、自分の好きな音楽を聞くとテンションが上がってしまい、逆効果になりがちなので注意が必要です。
臭覚
五感の中で最も快眠効果が出やすいのが嗅覚だと言われています。嗅覚は他の4 つとは違う伝達路を持っていて、脳内にある視床下部という場所に直接刺激を与えることができるからです。視床下部は睡眠に深く関係する自律神経やホルモンをコントロールしているので、ぜひ鎮静作用のあるラベンダーやカモミールなどの香りを試してみてください。
味覚
夕食は寝る3時間前までにとるのが理想的です。肉類・魚類・豆類・乳製品に含まれる必須アミノ酸の「トリプトファン」と魚介類に多く含まれる非必須アミノ酸の「グリシン」は快眠に欠かせない栄養素です。前者はメラトニンの正常な分泌を促すセロトニンの原料になり、後者は体温を低下させて自然な入眠をサポートをしてくれます。
眠れない時はハーブティーやホットミルク、バナナなどをお腹に入れてみましょう。
触覚
寝る1~2時間前までに、40℃前後のぬるめのお湯に10~30分浸かるのがベストな入浴です。眠れない時はストレッチやツボ押しを試してみてください。快眠に効くツボは、その名も「安眠」と「失眠」です。「安眠」は耳の後ろにある骨から指1本分下にあるので、交互に刺激してみてください。「失眠」は、かかとの真ん中にあるので、少し強めの力でゴリゴリとほぐしましょう。
カフェインの話
眠気覚ましで知られるカフェインは、個人差もありますが、摂取してから効果が感じられるまで15分から2時間とかなりの開きがあります。コーヒーやお茶にはリラックス効果もありますが、摂取するタイミングには注意が必要です。寝る4時間前からはカフェインレスやデカフェの飲食物を楽しむようにしましょう。
枕の話
枕選びのポイントは高さにあります。適切な高さは、眠っている間も自然な首のカーブを保つことができるかどうかで判断することができます。自分で分からない時は専門店や専門家に相談してみるのもいいかもしれませんね。
【快眠Point2】 すっきり目覚めよう
良い眠りと快適な目覚めがワンセットになって、初めて「快眠」と言えるので、起床する時の状態も大切です。新しい1日のスタートにふさわしい爽やかな目覚めをするために、心がけたいポイントを整理しました。
毎日同じ時刻に起きる
体内時計に従った規則正しい生活は、質の良い睡眠と目覚めのためにとても大切です。寝つきが悪い時や眠りが浅い時でも、朝は同じ時間に起きてください。布団の中でダラダラ過ごしすぎると、熟睡感が減ってしまいます。 また遅寝でも早起きの生活をしているうちに、自然と入眠の速度や睡眠の質が改善していきます。
太陽の光を浴びる
目が覚めたら、まずは日光を浴びて体内時計のスイッチをオンにしましょう。体内時計を動かして覚醒ホルモンとも言われるセロトニンを出すには、2500ルクス以上の光が必要です。たとえ曇りや雨でも、ガラス越しでも、太陽の光は室内照明より高い照度を持っています。遮光タイプのカーテンなどは開けっ放しにして眠るのもおすすめです。
朝ごはんを食べる
朝ごはんには体内時計を整える働きのほか、血行を良くして脳や身体にエンジンをかける役目があります。朝からしっかり頭を働かせたい人には必須と言えるでしょう。
おすすめの朝食は、ご飯なら納豆、パンなら目玉焼きです。これらに乳製品とフルーツが加われば、シンプルながら文句なしの組み合わせになります。
やってみよう! 前日の復習をする
復習は脳が活発に働き、集中力が最も高まるといわれている午前4 時から午前10時までに行うのが効果的です。朝ごはんを食べたあとに前日に勉強したことを復習してみましょう!
覚醒ツボの話
頭頂部にある「百会(ひゃくえ)」は血流を良くしてくれるので、適度に刺激すると爽快な目覚めを促します。また中指の爪の付け根にある「中衝(ちゅうしょう)」は眠気やイライラした気分を和らげてくれます。
【快眠Point3】 熟睡するためのヒント
最後にぜひ知っておきたい熟睡するためのヒントを3つご紹介します。
◆睡眠時間にこだわりすぎない
適切な睡眠時間は人それぞれで、長時間必要な人もいれば、短時間でも十分な人もいます。また季節や体調にも左右されるので、日中に眠くならなければ十分な睡眠がとれていると判断して問題ありません。
睡眠に関する時間でこだわるとすれば、それは起きる時間です。寝る時間にはこだわりすぎず、「眠くなったら寝る」くらいの気持ちでいいでしょう。
◆昼寝は午後3時前後の20~30分
午後2~4時は誰もが眠気を感じやすい時間帯です。これは体内時計のリズムによるものなので、我慢できない時は午後3時前後に20~30 分を目安に短時間の仮眠をとりましょう。長い時間だとノンレム睡眠に入ってしまうので、目覚めが悪くなる上に夜の睡眠の質も悪くしてしまいます。短時間の仮眠なら脳にとってはよい休憩になって、仕事や学習の効率を上げてくれます。
◆寝だめは逆効果になることも
疲れや睡眠不足を感じている時は、いつもより1~2時間なら多めに寝ても問題ありません。その際は起きる時間は変えずに、寝る時間を早めるのがいいでしょう。起床時間を遅くすると、体内時計が後ろにずれて狂ってしまいがちだからです。早く寝られなかった時は、一度いつもと同じ時間に起きて日光を浴び体内時計を作動させてから、昼寝などで調節してみてくだい。
まとめ
ほんの少しの工夫と心がけで「快眠」できることがおわかりいただけたでしょうか。良い睡眠をとることで、生活リズムも整い、勉強や仕事の効率もアップする。まさに良いこと尽くめです。今日からはじめられる「快眠のすすめ」、皆さんもぜひ試してみてください!