特集 講師が語る
貿易実務検定®の魅力

  

私たちの生活に密接な「貿易」実務を身につけることで
選択肢が増え、これからの人生が楽しくなります。

柏原 麻美さん
Profile

柏原 麻美氏

有限会社エム・ケイ・ビリーブ 取締役
TAC貿易実務検定®講座 講師
通関士試験合格

柏原 麻美(かしわばら まみ)氏
神奈川県出身。4年制大学文学部を卒業後、商社会長秘書を経て1988年、ディー・エイチ・エル・ジャパン株式会社入社。通関部門、集配部門、カスタマーサービス部担当取締役秘書として勤務。1992年より専門学校にて秘書検定講座、通関士講座、貿易実務検定®講座講師として教壇に立つ。2003年、有限会社エム・ケイ・ビリーブ設立。大学や企業などで貿易実務検定®講座や通関士講座を多数担当。2012年8月よりTAC八重洲校にて貿易実務検定®講座を担当。

 「貿易」という言葉を聞くと、自分には関係がない、難しそう、と考えてしまう方が多いのではないでしょうか。実際に私たちが口にする食品や着ている衣服の多くは貿易によってもたらされたものです。その貿易の実務を学ぶ「貿易実務検定®」について、TAC貿易実務検定®講座・講師の柏原麻美先生から、学ぶメリットや効果について詳しくお聞きしました。

貿易全体の流れを学び、自分で貿易実務ができるように

──貿易実務検定®について教えてください。

柏原 貿易実務検定®には、C級、B級、A級が設けられていますが、ここではTACで開講しているC級、B級についてお話ししていきます。
 C級は、貿易とはどういうものか、貿易全体の流れを学ぶ内容になっています。商社などでは新入社員研修、もしくは1年くらいの実務経験を積めば見えてくる内容で、商品の発注や必要書類の手配など、貿易業務ができるようになる基礎知識の取得が目的です。試験科目は貿易実務分野と貿易英語ですが、専門用語が多く使われていますので、そこをしっかりと覚えることが必要ですね。
 私も以前は商社に勤務していましたが、取引の規模が大きくなるとひとりですべての業務を行うのではなく、営業、契約、経理などと分業化されていました。振り返ってみると当時の私は全体をわかってはいませんでした。担当していた業務の前や後ろのフローを少しでもわかっていれば、もっといい仕事ができたのではないかと思いますね。
 C級では貿易全体の流れを学びますので、貿易という業務の中で自分はどのような仕事を担当したいのか、自分のスキルが活かせるのはどこかを見つけていただくのにも最適です。
 B級は、C級で学んだ貿易全体の流れを踏まえて、貿易に必要な書類作成ができるレベルの内容を学びます。C級を取得することでどのような書類があるのかはわかりますが、B級になると書類を見ながら別の書類を作成できる、つまり自分で業務を行える知識を身につけられます。また、商品が壊れていたときの対応、海外マーケティング、相手国での市場開拓の方法など、より実践的な貿易実務を学びます。
 実務経験でいうと2~3年で身につけられる知識で、C級レベルの新人の面倒を見ながら指示が出せる段階といっていいでしょう。

身近なもの、生活に欠かせないものも貿易で日本へ

──貿易というと、あまり自分には関係がない、難しそうだと感じる方も多いのですが。

柏原 確かに「貿易」という言葉を聞くと、難しいものと考えてしまう方が多いようですね。貿易とは「国と国との間で商品やサービスを売り買いすること」です。実は皆さんが普段食べている食品や着ている衣服には、貿易で日本に入って来たものがたくさんあり、貿易にまったく関係ない産業はまずないんです。貿易なんて自分には無関係と思っている方も、知らないうちに貿易と密接な生活を送っているのです。
 では、貿易とはどのようなものでしょうか。皆さんが毎日のように買い物で利用するコンビニエンスストアで、店員さんが海外にいるとイメージしてください。するとどのようなことが問題になるでしょう。
「相手と時差がある」、「言葉が通じない」、「物理的な距離がある」、「文化が違う」など、様々なリスクが出てきますね。日本が貿易によって成長してきた国であることは誰もが知っていることと思いますが、私たちの先輩方はそうした貿易のリスク、例えば「品物を積んだ船が沈むかもしれない」、「お金を持ち逃げされるかもしれない」、「会ったことがない人を信用できるのだろうか」、などというリスクを減らすために貿易のシステムを作ってきたのです。このリスクを小さくするためのシステムを学ぶのが貿易実務検定®なのです。

──私たちにとっても貿易は身近なものなのですね。より貿易について知るために、何かトピックスを教えていただけますか。

柏原 世界で貿易は盛んに行われています。実際に「モノ」が動く貿易だけではなく、ソフトウェアやサービスといった実際には「モノ」が動かない貿易も増えています。
 ここでは「モノ」が動く貿易について少しお話しします。皆さんも聞いたことがあると思いますが、日本は食料自給率が低いと言われています。例えば、日本食である天ぷら蕎麦を作ろうとすると、なんと100%日本産は水だけだったという調査を目にしたことがあります。蕎麦粉や天ぷら粉、天ぷらにするエビは、そのほとんどの食材がかなりの割合で輸入されたもので作られているのです。本当に身近な食の分野、それも日本食でさえも貿易なしでは作ることも食べることもできないのが現実です。ですので、「貿易は商社や専門家の仕事だから、自分には関係ない」とは言い切れないわけです。

──日本食でも貿易なしでは食べることができないのですね。

柏原 そうなんです。そして貿易は全世界平等が原則ですが、実際には二国間自由貿易協定を締結する国が増えています。ある国とのFTA(自由貿易協定)、EPA(経済連携協定)の交渉を行っている、あるいは締結したといったニュースが流れることがありますが、まさにこのことです。
 日本は今、シンガポールをはじめとしたASEAN諸国、スイス、チリ、メキシコ、インド、ペルー、オーストラリア、モンゴルなど十数ヵ国と二国間自由貿易協定を結んでいます。その目的は、モノやサービス、人材の往来の障壁を小さくしていって、最終的には自由に往来できることをめざしています。
 二国間自由貿易協定のメリットをお話しすると、例えば、チリ産とフランス産の食べ物が並んでいて、同じ値段だとしたら、どちらを選ぶでしょうか。日本はチリと二国間自由貿易協定を結んでいますので、チリからの輸入のほうが関税が低くなっています。関税は販売価格に転嫁されますので、同じ値段で売られていても、もともとの価格が高いのはチリ産で、こちらのほうがお得なのです。なんとなくフランス産のほうがオシャレなイメージがあるかもしれませんが、貿易を通してみると違った見え方になるのです。貿易に興味を持って学びながら生活をしていると、いたるところで同様の発見があるはずです。
 また、貿易実務検定®を学ぶと、モノが日本にたどり着くまでの動きがわかります。ヨーロッパから日本に船舶を使って輸出されるものは、必ず赤道を通ってから日本に届きます。現在ではモノを運ぶためのコンテナのレベルが上がっており、ヨーロッパでの出荷時から日本への着荷時まで、一定の温度を維持した状態で輸送されています。以前はワインなどもただ箱詰めされて常温のまま熱帯である赤道を越えてきたのです。また航空機による輸送も発達していますし、船舶の高速化も進んでいますので、より少ない日数で日本にモノが届くようになっています。すると今までは冷凍でしか輸送できなかった肉や魚などの食品も、チルドで新鮮な状態を保ったまま日本に届くようになりました。当然、昔より美味しくなったものがたくさん増えているんです。
 貿易は別世界の出来事ではなくて、食品や衣類など私たちの生活に直結しているものです。今後も国際的な貿易に関する話題が続いていくと思いますので、貿易実務検定®を学ぶと日々のニュースの見方が変わってくるかもしれませんね。

貿易実務を自らの強みに

──実際にTACで貿易実務検定®を学んでいる方には社会人と大学生がいると伺いました。社会人ではどのような方が多いのでしょうか。

柏原 社会人の場合は、2つのパターンがあります。
 1つは貿易業界に進みたいと思っていたのにチャンスがなかった方、あるいは現在は他業界にいるけれど貿易業界で働きたいとお考えで、貿易実務検定®を勉強して貿易業界への転職をめざす方です。
 2つ目は現在、商社などで貿易の仕事に携わっている方が貿易全体を学ぼうとされる場合、あるいは今後のキャリアアップを考えて貿易実務を自らの強みにすべく学ばれる方です。中には現在のご自身の仕事よりもやってみたい仕事が社内にあり、きちんと自分のスキルをアピールする手段のひとつとして学ばれる方もいらっしゃるようです。

──大学生ではどのような方が多いのでしょうか。

柏原 大学生に関しては、やはり貿易業界や商社への就職をお考えの方が多いですね。英語を学んでいる方は結構大勢いて、英語を使って国際的にやり取りをする仕事に漠然としたあこがれを抱いています。でも、英語を使って何をしたいのかを尋ねると、商社や航空会社に就職したい、ということまでは出てきても、その先が出てきません。就職活動における面接で「英語が話せます」とアピールすれば、「じゃあ英語を使って何がしたいの?」と次のステップを聞かれる時代です。英語ができることをアピールするにしても、「外国人の友だちが多い」だけでは強みにはならないんです。そこでより具体的なスキルにつながる貿易実務検定®に着目される方が増えています。
 また、貿易業界や商社への就職活動で「貿易を勉強してきました」と言っても、学部で貿易について学んでいる方も多く、どれだけ勉強してきたのか、どれだけわかっているのかが伝わりません。そこで貿易実務検定®を学び、C級あるいはB級を取得していれば、履歴書の資格欄に「貿易実務検定®C級合格」と1行書くだけで、どの程度の勉強をしてきたかを明確に伝えることができます。すると面接官も「貿易実務検定®C級合格ということは、つまりここまでわかっているな」と、その理解度を踏まえて具体的な質問をしやすくなりますし、話のきっかけにもなりますから有利になるでしょう。
 また、貿易実務検定®を学ぶと貿易業界にはどのような仕事があるのかを知ることができるというメリットがあります。商社や航空会社は誰でも知っていますが、貿易業界には学生にあまり知られていない業界もたくさんあります。英語を使って貿易に関する仕事をしたい、国際的な仕事をしたいといった場合、そういった業界を調べて就職活動をすることで、ご自身がやりたい仕事にグッと近づくことができます。

──実際に学んでいる受講生について教えてください。

柏原 私が担当しているTAC八重洲校の教室講座での話になりますが、やはり社会人の方が多くて半数以上が女性です。年代としては20代から50代までと幅広いですね。やはり自分がやりたい仕事をするために貿易全体を知りたい、社内での評価を上げたい、といった目的のために勉強される方が多いようです。中には男性がリタイア後に趣味を活かした貿易関係の仕事を始めたいので、実際に自分でできる内容を確認したいという動機の方もいました。

大学生の場合、入社後のアドバンテージにも

──貿易実務検定®はどのような方に学んでほしいとお考えですか。

柏原 まず「貿易」が難しいと思っている方々に、そうではないことを知ってほしいと思います。そして、就職や転職、キャリアアップをお考えの方で何か資格がほしいという方にお勧めします。先にお話ししたように貿易にまったく関係のない業界はまずありませんからね。

──貿易実務検定®を取得すると、就職や転職などではどのように役立つのでしょうか。

柏原 大学生の場合、商社や物流業界などに就職される方は、同期入社の方よりも貿易全体についての知識がありますから、自分たちがどのような仕事をするのか、これはどういう仕事なのかが理解でき、アドバンテージになると思います。場合によっては、新入社員研修で学ぶ貿易関係についての内容はすべて知っていた、ということがあるかもしれませんね。
 転職やスキルアップをお考えの方の場合、貿易全体を知っているという証明になるので、アピールポイントになると思います。貿易全体を理解した上で、自分のスキルは貿易の中でも特にこの分野で役立てられる、この業務が向いていると具体的にアピールができます。つまり転職でもスキルアップでも、より具体的なご自身がやりたい仕事についての提案ができることが大きなメリットになるでしょう。
 また大学生、社会人に関係なく、資格を取得しているということは、何らかの目標を立てて、計画的に取り組み成功したという実績として評価されます。大学生であれ、転職をお考えの方であれ、自分の本業とは直接関係のないことでも自発的にひとつの目標として掲げ、計画的にやり遂げているわけですから。難題であっても計画を立てて、それを乗り越える力があるというアピールにつながると思います。

──貿易に関しては国家資格として通関士があります。貿易実務検定®からのステップアップを考える方もいるのでしょうか。

柏原 貿易全体の流れの中で、書類やお金が動くのですが、1回だけ「モノ」が動きます。この場面で必要になるのが通関士です。輸出をする、輸入をするためには、法律に基づいた許可を得なければならないのですが、その法律と実務を司る国家資格です。
 通関士は輸出入手続を行うプロフェッショナルですが、貿易実務検定®で貿易全体を学ぶことで通関士に興味を持ち、ステップアップされる方もいます。貿易実務検定®で学ぶ輸出入に関わる法律は当然、通関士試験でも必要になりますし、貿易ということを理解した上でのチャレンジになりますから、自分の実力を高めたいという方にはお勧めですね。また、貿易業務に携わると通関士と仕事をすることになりますから、自ら通関士となるのもいいですし、通関士に依頼する立場になるとしても、その勉強をしておくことはメリットになると思います。
 また、通関士をめざしたいけれど不安がある方は、まず貿易実務検定®から学習を始めて、貿易全体を把握した上で通関士試験に進むという道もあると思います。
 ちなみに通関士資格を取得されてから、改めて貿易全体の流れを学びたい、資格の活かし方を知りたいということで、貿易実務検定®を勉強する方もいらっしゃいますよ。
 私は大学でも通関士試験対策と貿易実務検定®試験対策を教えていますが、通関士試験を受験する方には一緒に貿易実務検定®を受験するよう薦めています。これは就職活動対策として、仮に通関士試験に合格しなかった場合の対策と、通関士と貿易実務検定®という2つの資格を持つことで強みとするためのものです。先に少し触れたように法律面では共通する部分もありますので、勉強しやすいと思います。

──TOEIC®L&R TESTなど、他の資格試験との関連はいかがでしょうか。

柏原 貿易実務検定®では、お金の流れも勉強しますので、そこから興味を持って簿記を勉強される方がいます。もちろんTOEIC ®L&R TESTなど英語を学んできた方も多いでしょうから、貿易実務検定®か通関士とTOEIC ®L&R TEST、そして簿記となれば、希少価値のある人材として評価されると思います。今日では資格を1つ持っているという方は大勢います。でも、2つ、3つという方はあまり多くなく、就職や転職、キャリアアップに大いに役立つと思います。

※TOEIC is a Registe®ed trademark of Educational Testing Service (ETS). This publication is not endorsed or approved by ETS.

※L&R means LISTENING AND READING.

難しいと誤解されていることを、「難しくない」と伝える

──柏原先生が講義で心がけていることがありましたら教えてください。

柏原 私たち講師は、難しいと誤解されていることを「難しくない」と伝えることが仕事です。
 文字は人に読んでもらうために書くものですから、読みやすい板書、わかりやすい図解を心がけています。
 言葉は相手に理解してもらうために発するものですから、相手がわかっていない言葉でいくら話しても意味がありません。講義では受講する皆さんの反応がわかりますので、反応を見ながら少しわかりにくいかなという場合には言葉を足したりすることもあります。皆さんが「うん、わかった」とうなずいていただけるように、例え話をしたり、できる限りわかりやすい説明に努めています。
 また、長年教壇に立っておりますので、「ここは間違えやすい箇所だ」、「ここは質問が多い箇所だ」、というデータを持っています。ですので、そうした箇所については、最初から間違いや質問を踏まえて、間違えにくい、わかりやすい情報を提供できるようにしています。
 そして検定試験ですから、最低限の努力と根性で、最短距離で合格していただくためのノウハウもお伝えしています。ただ、丸暗記だけではそれだけになってしまいますので、貿易についてきちんと理解してもらって、自分で何かを見たら理解できる力を身につけていただければと考えています。せっかく勉強されるのですから、もっとこういうことを知りたいと夢や希望を見つけてもらえたらいいですね。

──貿易実務検定®の合格にはどれくらいの学習時間が必要なのでしょうか。

柏原 学習時間についてはよく質問されるのですが、人によってテキストを読み進めるスピードも違いますし、受験環境も違いますので一概に言うことは難しいですね。
 いつもお話ししているのは、1回の講義に対して、2時間くらいの復習をしてもらいたいということです。予習か復習かといえば、復習の時間をきちんと取ってほしいですね。講義は毎回毎回積み重ねていきますので、前回の内容が不確かなままでは、その上に積み重ねることができません。ですから、講義の最初に前回学んだ内容の確認テストを実施して、答え合わせをしています。仮にそこで間違えたり、わかっていなかった場合は、帰ってからその部分もその日の講義とあわせて復習していただけるといいと思います。専門用語もたくさん出てきますので、初めて出てきた場合は説明をしますが、2回目からは知っている前提で進めていきます。ですから、次の講義までに前の講義の内容を復習し身につけておく、この繰り返しをしていくことで知識が自然と積み上がって、合格へとつながっていくと思います。

──これから貿易実務検定®の学習を始めようという方、また資格取得をめざす読者にメッセージをお願いします。

柏原 貿易実務検定®だけでなく他の資格もそうですが、資格取得に興味を持ったのなら、ご自身を振り返ってみて、「やらない理由がない」のであればぜひ挑戦してほしいですね。知らないでいるよりも、知っていたほうが、これからの人生が楽しくなりますから、ぜひ始めてみてはいかがでしょうか。
 貿易実務検定®に関しては「難しいから無理だ」と誤解している方は、「無理だ」という情報を信じないでください。皆さんは貿易で日本に入って来た食べ物を食べていますし、服を着ています。そんな身近なことについて知っていて損はありません。知っていればアドバンテージになるはずです。貿易は難しいという方が多いのですが、決して難しいものではありません。さまざまなモノがどのような法律をクリアしないと入って来られないかがわかりますから、むしろ知ることで安心もできます。そして、応用力を身につけると、自然といろいろなことが聞えてくるようになります。するとニュースを見ても、街を歩いていても発見があって楽しくなるはずです。ぜひ、皆さんもがんばってください。

──本日は有意義なお話をいただきありがとうございました。

※貿易実務検定®は、株式会社マウンハーフジャパンの登録商標です。

合わせて読みたい

おススメ記事

「TACNEWS」に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。