日常生活にも役立つ「数字力」を鍛える10分間トレーニング ティーチャー鈴木の数的センスアップ塾 Vol.5
Point-考え方-
今回は、「数」というより「論理パズル」を題材にしました。与えられた条件を順序立てて整理していく、という意味では、それが数であろうが文章であろうが、基本的なアプローチの仕方は変わりません。
この問題の条件を見ると、「人」「プロジェクト」「1つのプロジェクトに携わっている人数」「1人が担当しているプロジェクト数」が関わっているようです。そこで、ヒント②で書いた通り、右のような縦に「人」、横に「プロジェクト」、縦横それぞれに合計数の欄をとった表を作り、与えられた条件をその表に書き込んでいくことで、情報を整理していくのがよいでしょう。
まず<条件Ⅰ>の処理ですが、この条件だけでは誰がどのプロジェクトに携わっているかの判断はまだできません。一旦保留して、後でつじつまを合わせることにしましょう。
続いて<条件Ⅱ>です。携わっている場合に「〇」、携わっていない場合に「×」を表に書き込むことにします。すると、中村さんのプロジェクトXの欄に「〇」、落合さんのプロジェクトZの欄に「×」を書き込むことになります。【図1】
<条件Ⅲ>も同じですね。小林さんのプロジェクトYの欄に「〇」、橘さんのプロジェクトZの欄に「×」を書き込めばOKです。【図2】
では続いて、<条件Ⅳ>です。「岡村さんが携わっているプロジェクトは2つ」「中村さんが携わっているプロジェクトは1つ」の条件は、〇の数欄に書き入れます。岡村さんの行に「2」、中村さんの行に「1」ですね。
そして、すでに、中村さんはプロジェクトXに携わっていることがわかっているので、これと今の条件を合わせると、中村さんは他の3つのプロジェクト(Y・Z・W)には携わっていないことになります。【図3】
では<条件Ⅴ>です。「プロジェクトZに携わっている人は2人」「プロジェクトYに携わっている人は1人」という条件をそれぞれZ列・Y列の〇の数欄に書き入れます。ですが、表を確認すると、中村さん、落合さん、橘さんはプロジェクトZに携わっていないことがわかっているので、小林さんと岡村さんがプロジェクトZに携わっていることになります。
さらに、すでに小林さんがプロジェクトYに携わっていることがわかっているため、それ以外の人は、プロジェクトYに携わっていないことになります。【図4】
では最後の<条件Ⅵ>です。「プロジェクトWに携わっているのは岡村さんだけ」ですので、これを表に反映させましょう。【図5】
あとは、保留していた<条件Ⅰ>の「2つのプロジェクトに携わっている人は2人、1つのプロジェクトに携わっている人は3人」を反映させて、プロジェクトXの列を埋めていきましょう。すでに小林さんと岡村さんは2つのプロジェクトに携わっていることがわかっているので、「1つのプロジェクトに携わっている人」とは、この2人以外の、中村さん、落合さん、橘さんのことだとわかりますね。よってプロジェクトXには、落合さんと橘さんがともに携わっていて、小林さんは携わっていないことが判明します。【図6】
以上より、橘さんが携わっているのは、プロジェクトXのみであることがわかります!
Answer
一見複雑な情報でも、1つずつ論理的に整理すれば解決できるということが感じられたのではないでしょうか。いわゆる「数学」は「数」も使いますが、この「論理」が必要な場合も多いのです。また、今回は今までの「ザ・数学」のような問題とは雰囲気を変えて、実際のビジネスシーンを例に取った問題にしてみました。こういった問題を解くことで、「数学」を応用できる幅を広げ、日頃のビジネスシーンでも「数学的な見方・考え方」を役立てられるということを、少しずつ知っていただけたらと思います。
表にして考えると頭が整理されますね!
次回は4月号(3/1発刊)掲載予定です。お楽しみに!
[『TACNEWS』 2022年2月号|連載|ティーチャー鈴木の数的センスアップ塾]
筆者 鈴木 伸介(すずき しんすけ)
TAC統計検定®・ビジネス数学検定 ・中小企業診断士講座講師
ハーモニービジョン株式会社代表取締役
各種数学セミナーで講師活動を行いながら、社会人向け数学教室「おとなのENJOY!数学クラブ」「おとな数学オンライン」を主宰、ビジネスパーソンの数学リテラシー向上に尽力している。
保有資格:中小企業診断士・統計調査士・ ビジネス数学検定1級AAA
著 書 : 『もう一度解いてみる入試数学』(すばる舎)