読めばモチベーションUP?ビジネスや会計の気になる「あの本」を紹介 萌さんとカッキーの読書室 #36
仕事と資格マガジン『TACNEWS』から生まれた会計小説『女子大生会計士の事件簿』のメインキャラクター、公認会計士・藤原萌実(萌さん)と新人スタッフ・柿本一麻(カッキー)のふたりが、気になる本について激論を交わす…?!ゆったり、まったり、時に激しい、「楽しく、ためになる読書室」です。
『JUST KEEP BUYING
自動的に富が増え続ける「お金」と「時間」の法則』
著者 :ニック・マジューリ(児島修 訳)
出版社 :ダイヤモンド社
初版 :2023年
カッキー 萌さん、「貯金は収入の2割」でいいんですよね?
萌さん 何よ、突然!?
カッキー あと、持ち家よりも賃貸のほうがいいんですよね? そして、投資はしたほうがいいんですよね。株は何を買えばいいんですか?
萌さん 次から次へと、質問ばっかりやめてよ。
カッキー すみません……。昨日こういった質問を、友達に訊かれたんですよ。「お前、会計士なんだからお金に詳しいだろ」って。
萌さん あー、“会計士あるある”かもね。会計士だからといって、投資とかに詳しいわけじゃないのにね。で、カッキーはなんて返事したのよ?
カッキー 「僕の直属の上司の女子大生会計士が投資に詳しいから訊いてみる!」って咄嗟に言ってしまったので、教えてください。萌さん!
萌さん なんてこと言うのよ! 私だって責任持てないわよ。
カッキー そんなこと言わずに、助けてくださいよ~。
萌さん ――まったく、仕方ないわね。とりあえず、この本を徹夜して読んで、明日返事をしてあげなさい。
カッキー 『ジャスト・キープ・バイイング』――ですか?
萌さん ただ買い続けなさい、という意味よ。
カッキー ということは、株をただ買い続ければいいんですね!
萌さん 最終的にはそうなんだけど、どうしてそれが正解なのかを過去のデータを駆使して解説した、アメリカのデータサイエンティストによる科学的な投資本よ。
■目次
【はじめに】
【第1章】どこから始めるべきか?
――お金がない人は「貯金」を、お金がある人は「投資」を重視すべき理由
《第1部》貯金力アップ篇
【第2章】どのくらい貯金すればいいのか?
――思っているほど多く貯めなくても大丈夫
【第3章】こうすればもっと貯金できる
――パーソナルファイナンス最大のウソ
【第4章】罪悪感なしでお金を使う方法
――「2倍ルール」と充実感の最大化
【第5章】収入アップに合わせて生活レベルを上げるのは、どれくらい許される?
――世間で思われている以上に、給料が増えた分、豊かさは享受できる
【第6章】借金はすべきか?
――クレジットカードの負債が必ずしも悪ではない理由
【第7章】家は借りるべきか買うべきか?
――人生最大の買い物をどう考えるか
【第8章】頭金を貯める方法
――なぜ「時間軸」が大切なのか?
【第9章】いつリタイアできるか?
――一番大切なのは「お金」ではない
《第2部》投資力アップ篇
【第10章】なぜ投資すべきか?
――お金を増やすことが重要な時代になった3つの理由
【第11章】何に投資すべきか?
――「富への唯一絶対の道」は存在しない
【第12章】個別株は買うな
――個人投資家を焼き尽くす投資哲学
【第13章】いつ投資すべきか?
――なぜ早いほうがいいのか
【第14章】安値を待つべきではない理由
――神でさえ「ドルコスト平均法」には勝てない
【第15章】投資が「運」に左右される理由
――と、なぜ「運」を気にしすぎる必要がないのか?
【第16章】相場の変動を恐れるな
――投資で成功するための「入場料」
【第17章】暴落時の投資法
――パニック時でも平静さを保つメンタル
【第18章】いつ売ればいいのか?
――リバランス、集中投資状態、投資の究極の目的について
【第19章】資産が増えてもお金持ちと感じられない理由
――なぜ、あなたはすでに豊かなのか?
【第20章】一番重要な資産
――なぜそれはこれ以上増やすことができないのか
【巻末プレミアム】 「ジャスト・キープ・バイイング」21の黄金ルール
――タイムトラベラーのゲームに勝つ方法
(目次より抜粋)
カッキー 前半が貯金で、後半が投資について解説しているんですね。
萌さん ある程度の貯金がないと投資も始められないからね。著者の言葉を借りると、「貯金は貧しい(投資をするお金がない)人のためのものであり、投資は豊かな(投資をするお金がある)人のためのものだ」からね。
カッキー 結構キツい表現ですけど……。
萌さん つまり、その人の状況によって、今が貯金に集中すべき時期なのか、投資に時間を割くべき時期なのかが異なるってことよ。そして、だいたい人生の前半は貯金が大事で、後半になると投資が大事になってくる。
(P42より抜粋)
カッキー つまり、若いうちは貯金して、退職後とかは投資に時間をかけたほうがいい、ということですか?
萌さん ざっくり言うと、そうね。両方大事だから、本書でも貯金と投資の両方を取り上げているんでしょうね。
カッキー じゃあ、まず貯金は何割したらいいんです? やっぱり2割ですか?
萌さん 連邦準備制度理事会(FRB)と全米経済研究所の研究によると、下位20%の所得者は毎年収入の1%を貯金して、上位20%の所得者は24%を貯金、さらに上位1%の所得者は51%を貯金しているそうよ。
カッキー ということは、貯金をすればするほどお金持ちになれるんですね!
萌さん 逆よ。お金持ちほど貯金がしやすくなるってこと。収入が増えても、その分生活費が増大するわけじゃないからね。つまり、所得水準によって貯蓄率が変わるって話。だから収入の違いを無視して「2割」とか決め打ちするのは無意味だってことよ。
カッキー じゃあ、どうすればいいんですか?
萌さん 収入に合わせて、「できる範囲で貯金する」のよ。そうすれば、ストレスが大幅に減り、幸福度も格段にアップするわ。米国心理学会によると、景気の状況にかかわらず、米国人の一番のストレス要因は一貫してお金だそうよ。経済的な苦しさより、貯蓄率の低さからくるストレスのほうが悪影響を与えるんだって。
カッキー そうなんですか。「2割」とかのルールに縛られないほうがいいってことはわかりましたが、貯金はすればするほどいい、ってことですか?
萌さん うーん。「貯金しすぎている可能性」だってあるわよ。
カッキー えっ、そんなことがあるんですか!?
萌さん テキサス工科大学の研究によると、年金受給者の資産は、老後生活期間中に使い果たされるより、変化しないか、むしろ増えているそうよ。つまり、年金受給者にとって、実際にお金がなくなることよりも、お金がなくなることに対する恐怖のほうが大きな脅威ってわけ。
カッキー お金が貯まってばかりで使われないのも、それはそれでもったいないですね。
萌さん 遺族は嬉しいでしょうけどね。
カッキー じゃあ、結局、お金持ちになるにはどうしたらいいんですか?
萌さん 王道は、「収入を増やし、収益を生み出す資産に投資する」ことよ。支出はできる範囲で引き締め、あとは収入を増やすことに集中する。自分という人的資本を金融資本に変えていくの。
カッキー 具体的には?
萌さん サービスを提供する、人に教える、商品を売る、会社で昇進するとか、方法はいくつかあるわ。そして、富を築く旅の最終目標は、自分のビジネスか他人のビジネスのオーナーになることよ。
カッキー つまり、自分でビジネスを起こすか、どこかの会社の株主になるのが、さらなる収入に繋がるということですか。
萌さん そういうことね。
カッキー じゃあ、どの株を買えばいいんです? やっぱりAppleとかAmazonですか?それともGoogle? Netflix?
萌さん 個別銘柄は買わないほうがいいわよ。S&P500(アメリカの代表的な500社の株価指数)とかのインデックスの投資信託でいいのよ。
カッキー えー、そうなんですかー。つまんなくないですか?
萌さん 経済学者ヘンドリック・ベッセンビンダーの論文によると、1926年から2016年にかけて、米短期国債を上回る株式のリターンを生み出したのは、4%の株式だけだったそうよ。アンタには、この4%の銘柄を選び、96%の銘柄を選ばない自信はあるかしら?
カッキー ないですね……。
萌さん 個別株投資は企業分析などに時間がかかる割には、インデックス投資よりも成功確率が低いからね。ストレスがたまるだけよ。著者が言うには、個別株は運の要素も大きいから、そんなゲームを続けてはいけない。人生はただでさえ運に左右されているのだから――ってね。
カッキー アメリカ人らしい、スマートなコメントですね。
萌さん そうね。運任せにせず、地道にインデックスの投資信託を買い続ける――まさに、『JUST KEEP BUYING』よ。
[『TACNEWS』2023年11月号│連載│萌さんとカッキーの読書室]
山田真哉(やまだしんや)
公認会計士・税理士。TAC梅田校出身。中央青山監査法人(当時)を経て、現在、芸能文化税理士法人会長。株式会社ブシロード等の社外監査役。著書に『女子大生会計士の事件簿』シリーズ、『世界一やさしい会計の本です』『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』等。
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