読めばモチベーションUP?ビジネスや会計の気になる「あの本」を紹介 萌さんとカッキーの読書室 #33
仕事と資格マガジン『TACNEWS』から生まれた会計小説『女子大生会計士の事件簿』のメインキャラクター、公認会計士・藤原萌実(萌さん)と新人スタッフ・柿本一麻(カッキー)のふたりが、気になる本について激論を交わす…?!ゆったり、まったり、時に激しい、「楽しく、ためになる読書室」です。
コンサルティング会社 完全サバイバルマニュアル
著者 :メン極
出版社 :文藝春秋
初版 :2023年
萌さん どうしたの、そんなに落ち込んで。
カッキー インチャージ(主査)に仕事が遅いって怒られたんです。しかも間違いも多いって、やり直しさせられて……さらに次の仕事の準備もできていないって、また怒らて……うぅ。
萌さん 怒られてばかりね。で、その救いを求める子羊のような目は何よ、カッキー?
カッキー いつも悩みを解決してくれる本を教えてくれるじゃないですか。今回も教えてください! 上から怒られなくなるような本を!
萌さん すぐ人に頼るのはどうかと思うけど、まあ、本から学ぼうとする姿勢は悪くないわね。
カッキー ですよねっ! あ、でも、できれば易しく丁寧に書かれていて、文章が面白くて、ついつい時間も忘れて読みふけってしまうような本がいいです。
萌さん 随分とわがままじゃない! もう仕方ないわね。そんなアンタにはこの本がいいかしら。
カッキー 『コンサルティング会社 完全サバイバルマニュアル』って――あのー、僕はコンサルになりたいわけじゃないんですけど?
萌さん 仕事のスピードを速くして、間違えをなくして、準備の段取りとかもしっかりしたいんでしょ? だったら、その道のプロであるコンサルの技術を盗むのが手っ取り早いんじゃないの。
【目次】
第Ⅰ部 アナリスト編
――私大文系バンドマン。コンサルタントになる
「“速い”はそれ自体が重要な価値だ」
――スピードを生む仕事の基礎力
「ピカソの絵を買う人は値段を見て買わない」
――品質に説得力を持たせる
「自分の限界を会社の限界にするな」
――会社の<集合知>を徹底活用する
「3ヶ月後に何を言えれば成功なのか?」
――コンサルタントの型=「論点思考」「仮説思考」
「お前がいないくらいで潰れるようなチームじゃない」
――サステナブルな仕事のスタイルとは?
第Ⅱ部 ジュニアコンサルタント編
――限界労働。その先
「顧客の歴史に敬意を払え」
――クライアントを多角的に理解する
「前提を疑え」
――「言われた通りにやりました」に潜む罠
「あなたが社長ならどうします?」
――「変化」を起こすから価値がある
「作業を切り出せ」
――チームにどう働いてもらうか?
第Ⅲ部 シニアコンサルタント・マネージャー編
――ミッションは勝つこと
「真剣にやってその程度なら降格しろ」
――マネージャーの絶対条件
「お前って結局何ができる奴なんだっけ?」
――自分が進化し続ける重要性
「最高のチームでした」
――周囲を動かすビジョンを持つ
(目次より一部抜粋)
カッキー 本の宣伝文句には『外資系大手コンサルティング会社を12年間サバイバルした著者が明かす、門外不出の秘技』って書かれてますよ! これは凄そうですが、僕にできるんでしょうか……。
萌さん この本が書かれた経緯は、著者が勤務していたコンサルティング会社を退職する際に、最後の部下となった一人のスタッフに向けて書いたものなんだって。その部下は他業種から転職してきた人で、コンサルティングという仕事が一体どういうものであるのかをほぼ理解していなかった。だから、部下がこの業界で働いていく上での道標を残せないかと考えて、自分が得た経験をマニュアルにしたのがキッカケだそうよ。
カッキー つまりは、超初心者向けに書かれたということですね。それなら、僕でも何とかなるかもです!
萌さん うーん、大丈夫かしら。まあ、この本の前半で取り上げられているのは、コンサルティング会社の新人が配属される、アナリスト職の仕事だからね。このアナリスト職は、『クライアントを取り巻く現状の調査・分析と結果の取りまとめ』を主な業務としているそうよ。
カッキー 監査スタッフも、会社の会計情報を集めて整理して分析して、取りまとめる仕事ですから、ちょっと似てますよね。
萌さん で、カッキーがまず怒られたのは、仕事の速度よね。速度を高める例として、A君とB君の話があるわ。
同じ仕事を同じだけの時間で完了するA君とB君
A君「本日中に終わらせます!」
B君「明日18時まで時間をいただければ終わらせることができるかも」
→2人とも翌日17時に提出
(本書P39・40を要約)
萌さん A君とB君、同じ仕事をして同じ成果を出したんだけど、どちらの方が評価が高いと思う?
カッキー それは、B君でしょうね。B君はしっかりと締切りを守って、さらには1時間巻いて終わらせているので、優秀に感じます。かたや、A君は時間にルーズで心証も最悪ですよ。
萌さん そう、だからB君になればいいのよ。
カッキー いやいやいや、それは単なるインチキというか、ごまかしじゃないですか。時間を多めに言えばいいだけですよね。
萌さん でも、時間を長く言えばいいってもんでもないわよ。長すぎると上司も怪しむし、「コイツ、ヤル気がないな」と思われたらそれこそ評価が下がるわ。大事なのは、B君はちょうど1時間だけ多めに宣言できた、という点よ。
カッキー そう言われたら、絶妙な時間ですね。
萌さん そうなの。B君が優れていたのは「自分の作業に対する見積りの正確さと期待値調整の巧みさ」なの。まずは、上司の意図とズレた作業をしないようにするために、1日8時間の作業ロットを2時間単位に分離する。2時間集中して仕事をして、その成果をその都度、上司に報告する。
カッキー そうすれば、仮に作業が間違っていても大惨事にはならないですね。
萌さん そして、次に何が起きるのかを予測して仕事を行う。
カッキー いわゆる、先読みですね。
萌さん で、自分の仕事の完成形を自分なりにイメージする。
1 その仕事の目的はなんなのか?
2 仕事のインプットとアウトプットは明確か?
3 作業手順は明確か?
4 提出前に誰の確認が必要な仕事なのか?
5 タイムラインと優先順位は明確か?
こうして、完成形をイメージすることで、最短ルートを辿る方法を考え、自分の作業時間がどれくらいなのかを見積もれるのよ。
カッキー たしかに、それだけで仕事は早くなりそうですが。
萌さん はじめのうちは、1つの作業を開始する時に、時間を予測した上で、ストップウォッチで計測するのがいいそうよ。おそらく予測時間をオーバ-するだろうけど、どの手順や要素がネックになったかを振り返ることが大切よ。
カッキー そうやって、時間感覚を養うんですね。
萌さん そして、上司やクライアントには見積もった時間よりも少し長めに宣言することで、評価を高め、信頼を得て、よりレベルの高い仕事を任せてもらえるようになる、というわけよ。
カッキー はぁー。仕事にもいろんなテクニックがあるんですね。
萌さん 他にも仕事の品質の高め方とか、仮説の立て方とか、カッキーでも使えそうなテクニックがたっくさんあるから、それは本を読んで欲しいわ。
カッキー カッキー「でも」って言われるのは心外なんですが。
萌さん この本は、コンサル時代の経験が順に語られていくから、読者もそれを追体験している感じで、シンプルに読み物としても面白いのよね。
カッキー それは読むのが楽しみです。で、この本を読めば、僕は上から怒られなくなりますか?
萌さん この著者も散々上司から怒られながら出世しているから、アンタも当面怒られていて大丈夫よ。
カッキー いや、それだと全然解決できてないんですが……。
[『TACNEWS』2023年8月号│連載│萌さんとカッキーの読書室]
山田真哉(やまだしんや)
公認会計士・税理士。TAC梅田校出身。中央青山監査法人(当時)を経て、現在、芸能文化税理士法人会長。株式会社ブシロード等の社外監査役。著書に『女子大生会計士の事件簿』シリーズ、『世界一やさしい会計の本です』『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』等。
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