読めばモチベーションUP?ビジネスや会計の気になる「あの本」を紹介 萌さんとカッキーの読書室 #24
仕事と資格マガジン『TACNEWS』から生まれた会計小説『女子大生会計士の事件簿』のメインキャラクター、公認会計士・藤原萌実(萌さん)と新人スタッフ・柿本一麻(カッキー)のふたりが、気になる本について激論を交わす…?!ゆったり、まったり、時に激しい、「楽しく、ためになる読書室」です。
『経理になった君たちへ
ストーリー形式で楽しくわかる!
仕事の全体像/必須スキル/キャリアパス』
著者 :白井敬祐
出版社 :税務研究会出版局
初版 :2022年
カッキー 僕、嫌われているんですかねぇ……。
萌さん えっ、急に何の話!? よく知らないけど、アンタがそう思うなら、嫌われているんじゃないの?
カッキー えーっ、本当は萌さんも僕のことを嫌っていたんですね!
萌さん 何なの?もう面倒くさいわねえ。構ってちゃんなの? 何が言いたいのか、ハッキリ説明しなさい!
カッキー わ、わ、すみません。実は先週の監査で、クライアントの経理部の方々から睨まれてしまって。何か悪いことでも言っちゃったんでしょうか……。
萌さん まあ新人の監査人が経理部から嫌われるのは、監査あるあるだけどね。心当たりはないの?
カッキー あるといえば、ある支店での取引の証憑書類が少なかったので「数字の正確性が担保されていないから検証すべきです」って言ったら、経理部内の雰囲気が一気に悪くなったっていうのはありましたけど。
萌さん あちゃー、それよ、それ! 察するに、いままでもそんな暴論を吐いてきたんでしょ。だから、アンタへの心証が元々悪かった、そして今回も爆弾を落とされてしまった、と……そりゃ怒るわよ。
カッキー ちょっと待ってください! 監査人として当然のことを言ったまでですよ。
萌さん じゃあさ、アンタはその支店の取引の正確性を高めるためにどうして欲しいわけ? 追加資料を送ってもらうの? 誰かが支店に監査に行くの? システムを変えるの?
カッキー そ、そんなことを僕に言われても……それは現場の皆さんで考えたほうが……。
萌さん ほらやだ、無責任体質だ。「検証すべき」と言っておきながら、後は放り投げるわけ? 言われた経理部の人はどうしたらいいのか悩むし、そのために時間を取られるし。ただでさえ監査対応で忙しいのが、さらに忙しくなるのよ。
カッキー あっ……。
萌さん 「~すべき」を言うからには、どこをどう変えたら良いのか考えてから言いなさい。そもそもアンタが経理部の仕事を知らなすぎるから、そんないい加減なことを言うのよ。ちょうどいい本があるから、これを読みなさい。
カッキー ―――『経理になった君たちへ』ですか。
【目次】
第1章 経理部に配属されちゃった
1. 経理部に配属されちゃった!
2. 経理部ってどんなスキルが必要なの?
3. え?経理部ってたくさん種類があるの?
第2章 非上場会社/ 会計事務所委託編
1. 経理業務を会計事務所へ委託しよう
2. そもそも経理部ってどんな仕事するの?
3. 会計事務所に何の業務をお願いしよう?
第3章 非上場会社/ 単体経理編
1. 毎月決算しなきゃいけないんですか!?
2. 従業員の給料を計算しなきゃ!
3. 年次決算は大忙し!
第4章 非上場会社/ 大会社編
1. 大会社になっちゃった!
2. 監査法人がやってきた!
3. 監査役が新設された!
第5章 非上場会社/ 子会社編
1. 買収されちゃった!
2. 上場企業になると決算書の種類が増えるの?
3. 子会社経理って実際何やるの?
第6章 上場企業/ 親会社編
1. 親会社に出向になっちゃった!
2. 経理のお客さんって誰ですか?
(目次より主な部分を抜粋)
カッキー 小さい会社から上場企業の経理まで、いろんな経理実務を紹介しているんですね。
萌さん 一般的な経理のイメージは「請求書や領収書を会計システムに入力するだけの人」かもしれないけど、実際の役割はもっと色々あるのよ。3つに絞ると「お金の管理」「経営の意思決定に役立つ情報提供」「決算書の作成」。
カッキー 監査よりも役割が多そうですね。
萌さん そして、経理部で最低限必要とされるスキルも「簿記の知識」「Excelスキル」「コミュニケーション能力」とあるわ。
カッキー 簿記とExcelはわかりますが、コミュニケーション能力は、営業部じゃないんですから必須ではなくないですか?
萌さん それがさ、社内の他部署とのやり取りが頻繁にあるのよ。たとえば、事業部からの「新しい契約が決算にどう影響するのか」とか「新サービスの売上・費用はどの時点で計上すべきか」といった相談に一つひとつ答えるのも経理の仕事よ。だいたい、私たち監査人対応もコミュニケーション能力がないとやってられないじゃない。
カッキー たしかに。
萌さん 経理で大事なスキルはそれだけじゃないわ。さらにキャリアアップするためには「複雑な会計基準の知識」「英語」「ITスキル」も必要なの。
カッキー た、大変ですね……。
萌さん といった話までは、どの会社の経理でも共通の話なんだけど、あとの業務は会社によって全然違ってくるのよねー。
カッキー どういうことですか?
萌さん カッキーも最初に言っていた、「小さい会社から上場企業の経理まで」いろんな経理があるけど、会社の形態によって業務内容の範囲や重たさ・経験値が全然違うのよ。
(P46、P48より抜粋)
萌さん 会社規模が小さいほど、一人で資金管理・資産管理・労務管理・税務申告など何でもしないといけないから、経験は広がるけど忙しいの。
カッキー 一方、大企業は人材が豊富で、業務も財務部・総務部・人事部・財務部と分担するから一人当たりの業務負荷は小さいということですね。
萌さん 大企業でも、監査対応とかで業務量が多くなれば残業だらけだけどね。
カッキー 僕らのせいですか……。
萌さん そんな風に、業務は幅広いわ、会社によって役割が全然異なるわで、「経理」を一冊の本にすること自体が困難なんだけど、この本では主人公の環境がどんどん変わっていくことで、それを可能にしているの。新入社員がまったく縁のない経理部に配属されて、あれよあれよという間に会社の規模が変化して、最終的には大企業の経理に配属される。
カッキー マンガとかLINEっぽいチャットで話が進んでいくので、読みやすいですね。
萌さん この本は経理の仕事だけでなく、「経理にとって顧客は誰なのか」といった心構えも教えてくれるから、これから経理をやる人にはお勧めよ。他にも、経理と関わりがあるけど彼らの具体的な仕事内容は知らないっていう人も読んだほうが良いんじゃないかしら。これを読んだら、誰かさんみたいに暴言を吐いて嫌われることはないはずよ。
カッキー ご、ごめんなさい! ちゃんと読んで、今度謝りにいきます!
[『TACNEWS』2022年9月号│連載│萌さんとカッキーの読書室]
山田真哉(やまだしんや)
公認会計士・税理士。TAC梅田校出身。中央青山監査法人(当時)を経て、現在、芸能文化税理士法人会長。株式会社ブシロード等の社外監査役。著書に『女子大生会計士の事件簿』シリーズ、『世界一やさしい会計の本です』『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』等。
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