読めばモチベーションUP?ビジネスや会計の気になる「あの本」を紹介 萌さんとカッキーの読書室 #20

仕事と資格マガジン『TACNEWS』から生まれた会計小説『女子大生会計士の事件簿』のメインキャラクター、公認会計士・藤原萌実(萌さん)と新人スタッフ・柿本一麻(カッキー)のふたりが、気になる本について激論を交わす…?!ゆったり、まったり、時に激しい、「楽しく、ためになる読書室」です。

ニトリの働き方


『ニトリの働き方』

 著者  :似鳥昭雄
 出版社 :大和書房
 初版  :2020年

カッキー あー、仕事したくないよー。

萌さん 前回も同じセリフを言っていなかった? その時に紹介した本(『日本版FIRE超入門』)を読んで、とりあえず貯蓄のために頑張って働くことにしたんでしょうが。

カッキー そうなんですけど、上手くいかないというか、前に進まないというか……仕事の頑張り方がわからないんですよね。このまま目の前の仕事をこなしていくだけで、出世して収入を増やせるとも思えないですし。

萌さん そんなアンタにちょうどピッタリな本があるわよ。『ニトリの働き方』、帯には「不況をものともしないニトリ創業者が若手社員に語り続けた33の仕事論」って書いてあるわよ。

カッキー ニトリって、家具屋さんですよね。「お、ねだん以上。」でお馴染みの。

萌さん そうよ。一代で売上高7千億円の家具最大手グループをつくった似鳥昭雄会長が若手社員にどういう話をしてきたのか。そして、それを聞いた若手社員たちはどういったことをやってきたのかが具体的に語られている本よ。

【目次】

はじめに ニトリが大切にする4つのC

序章 志で変わる仕事と人生の結果
 成長の速さは、目標の大きさで決まる
 行動計画をもとに、すべきことを徹底実行する

第1章 チェンジ
 ―― 現状に満足せず、より良いものを求め続ける

 現状を否定するところから仕事は始まる
 「現場・現物・現実」三現主義を徹底する
 うまくいかなければ、「方向、方法、手順」の順で検証する

第2章 チャレンジ
 ―― 前人未到なことに挑戦していく

 「お客様が第一」に徹すれば、利益は後からついてくる
 優れたアイデアは「不平・不満・不便」の発見から生まれる
 20代から自己投資して学び、一番を目指す

第3章 コンペティション
 ―― 常に自分を成長させることを考える

 会社を自己成長のために使いなさい
 全体最適で考えられるスペシャリストを目指す
 仕事の優先順位を決め、最重要課題に集中する

第4章 コミュニケーション
 ―― 右手にそろばん、左手に義理人情

 具体的な数字の入らない会話は趣味、遊びと一緒である
 新しい提案は3つ、松竹梅ではなく「松を3つ」出す
 社長と社員も、上司と部下も、気持ちのうえでは対等

おわりに 「世のため、人のため」に終わりはない

(目次より一部抜粋)

カッキー 各章のタイトルがチェンジ、チャレンジ、コンペティション、コミュニケーションですが、この4つが大事なんですか?

萌さん そうよ。会社と自分が成長するために、Change(変化)、Challenge(挑戦)、Competition(競争)、Communication(対話)の4Cを大切にしているんだって。

カッキー 使い古された言葉かもしれませんが、変化とか挑戦って大事ですよね。僕は最近、変化も挑戦もしていない気がします……。

萌さん 変化は大事よ。好調なときでも現状に満足せずに変化し続けること、そして、ピンチに陥ってもそれを急成長のチャンスと捉えることはニトリの信条だそうよ。そして、今までと同じことをしていたら達成できないような目標を立てて、リスクを取ってでも実現に向けて前向きに挑むことも、人が成長する上で大事なんだって。

カッキー なんだか話が大きすぎて、僕にはちょっとムリかも……。

萌さん まあまあ。目標は巨大でも、現場での取り組みはもっと小さくて具体的だから安心しなさい。たとえば31歳で店長になった人の話とか―――。

カッキー 詳しく聞かせてください!

萌さん その店はずば抜けて高い売上高を誇っていて、その点の苦労はなかったんだけど、困ったのは駐車場で、周辺の道路で大渋滞が発生して地域住民に迷惑をかけていたの。

カッキー それは大変そうですねー。でも駐車場を増やせば良いのでは?

萌さん そうは簡単にいかないわよ。会社に言っても「土地がないので難しい」と断られたの。

カッキー ニトリ、ダメじゃないですか!

萌さん この辺のダメな事情も正直に載せているなんて、良い本よね。で、店長はどうしたのかというと、まずは駐車スペースの見直しをしたの。車1台ごとのスペースの仕切り幅を10~15cmずつ縮めて白線を引き直すことで、250台分だった駐車場から15台分の新たなスペースを生み出した。

カッキー お金をかけなくていい、賢いアイデアですね。

萌さん そして、一番来店客数が増える3月の引越シーズン前には、近くに建設前の更地を見つけて臨時駐車場にしたり、週末は営業していない会社の駐車場を土日だけ借りたり。

カッキー 本当にあの手この手ですね。こうやって、この店長さんは挑戦に成功したんですね。

萌さん 創意工夫って大事よね。人はこうした経験を積むことで成長するんじゃないかしら。

カッキー こういった話、僕、大好物です。もっと聞かせてください!

萌さん 「ベッドのマットレスを今より小さく、効率よく輸送できるようにせよ」と上司から命令された社員の話とかも聞きたい?

カッキー 聞きたいです!

萌さん その社員は1年間も試行錯誤して、やっと「マットレスをまとめて圧縮して運ぶこと」に成功したの。でも商品を開封するときの反発力が強すぎて、危険だからダメになっちゃったの。

カッキー えー、それは残念ですね。

萌さん そこで工場の人たちと試行錯誤しながら「1枚ずつ圧縮」して、さらに「手巻きでロール状にすること」で開封時の反発をなくす方法を編み出したの。その結果、1つのコンテナあたり約200枚の輸送だったのが約800枚の積載が可能になって、輸送だけで7000~8000万円の経費削減。さらに保管などのコストも下がるから1億円が削減されたの。さらに小さくなっているから、お客様も楽に持ち帰ることができるようになって超便利。グッドデザイン賞も受賞したのよ。

カッキー 一石二鳥、三鳥になったんですねー。

萌さん ニトリの社風自体が、とにかく大きな目標を立てて、それに向かって努力することを良しとしているみたいなの。たとえば、とにかく「値段を安くすること」という目標に向かって邁進していこう、みたいな。

カッキー ニトリっぽいですね。

萌さん でもそれは、単に原材料の質を変えたり、製造工程を省くというわけじゃなくて、品質を落とさない、むしろ品質を上げることで商品開発力を上げていく、というものなの。「作り方に無駄がなくなっていくと、商品は結果として高品質で安いものになる」ってね。

カッキー それが、「お、ねだん以上」なんですね。

萌さん この本は、ニトリの考え方がよく分かる本である一方、企業の宣伝本的な感じもするから短所が見えにくいという欠点もあるわね。ただ、仕事の大変さとか面白さがよく分かるから、就活生なんかにはお勧めできる一冊よ。

[『TACNEWS』2022年2月号│連載│萌さんとカッキーの読書室]

著者プロフィール

山田真哉(やまだしんや)

公認会計士・税理士。TAC梅田校出身。中央青山監査法人(当時)を経て、現在、芸能文化税理士法人会長。株式会社ブシロード等の社外監査役。著書に『女子大生会計士の事件簿』シリーズ、『世界一やさしい会計の本です』『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』等。

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