読めばモチベーションUP?ビジネスや会計の気になる「あの本」を紹介 萌さんとカッキーの読書室 #10

仕事と資格マガジン『TACNEWS』から生まれた会計小説『女子大生会計士の事件簿』のメインキャラクター、公認会計士・藤原萌実(萌さん)と新人スタッフ・柿本一麻(カッキー)のふたりが、気になる本について激論を交わす…?!ゆったり、まったり、時に激しい、「楽しく、ためになる読書室」です。

会計探偵リョウ・ホームズ


『大転換の時代 世界的投資家が予言』

 著者  :ジム・ロジャーズ
 出版社 :プレジデント社
 初版  :2020年

萌さん 今回は世界三大投資家の一人、ジム・ロジャーズの本よ。

カッキー あのう、世界三大投資家って初耳なんですけど、誰なんですか?

萌さん ウォーレン・バフェット、ジョージ・ソロス、そして今回の著者であるジム・ロジャーズよ。

カッキー 僕が知らない方ばかりですね……。その人たちは何時代の人ですか?

萌さん 今よ、今! 三人とも生きている人たちだって! カッキーの目の前にある本の表紙になんて書いてある? 「コロナ禍、バイデン新大統領、米中激突……2021年、最悪の危機をどう乗り切る?」って書いてあるでしょ。明らかに今の話じゃない。

カッキー あ、すみません。それにしても、「世界的投資家が予言」って凄いですね。これを読んで投資とかしたら無敵じゃないですか。萌さん、ズルいなぁ。こんなチート行為をするなんて。

萌さん 私は監査法人で働いているんだし、投資なんてしてないわよ。

カッキー じゃあ、何で読んでいるんですか?

萌さん 社会の流れを知るためよ。

カッキー でも、そんなのネットニュースでもYouTubeでも見られる時代ですよね?

萌さん そうだけど、それって日本発信の日本語によるコンテンツでしょ。海外の人がどういったことを経験し考えているのか、日本に対してどう思っているのかはわからないじゃない。

カッキー うっ、まあ……それは確かに。

萌さん 海外ニュースを原語でチェックできない人間が世界情勢を知るには、海外著者の翻訳本を読むのが一番手っ取り早いわけよ。

カッキー わかりました。ごもっともです。

萌さん それに、やっぱりネットコンテンツとは深さが違うしねー。特に、ジム・ロジャーズはアメリカで先駆的なヘッジファンドを立ち上げて大成功したあと、シンガポールに移住しているせいか、東アジアに対する言及が多いから、日本人でも読みやすいのよ。

カッキー それで、ロジャーズさんは今のコロナの時代についてどう言っているんですか? アメリカも日本も株価がとっても上がっていますけど。

萌さん ええ、株価が上がっているのは各国が紙幣を大量に刷っているからで、これから人生最悪の暴落が起きるって言ってるわ。

カッキー 本当ですか!? 大変じゃないですか。これから僕たちどうなるんでしょう……どうしよう、どうしよう。

萌さん あのさ、そこまで真に受けなくてもいいんだけど。ロジャーズの言っていることが全部正しいワケでもないし、誰も未来は100%予想できないわ。ただね、「株式市場が長い間上昇して、資金が大量に流入すると、株価が急上昇して相場が過熱するケースが多い。例えば、1989~90年の日本株や99年のアメリカ株がそうだった」とか言われると、説得力があるのよねえ。

カッキー 過去の経験でモノを言われると、やっぱりビクッてしますよ~。

【目次】

第一章 コロナショックから、私の人生最悪の不況に陥る世界

・ コロナでロックダウンした国は元には戻らない
・ ワクチン登場で市場が過熱しても長くは続かない
・ もはや世界はインフレから逃げられない!?
・ コロナのように流行する「MMT理論」は世界を破綻に導く
・ 日本を除くアジア諸国の不動産はすでにバブルである

第二章 ポストコロナの覇権を握る国はここだ

・ 過去に何度も覇権をとった国は、中国以外にない
・ 人民元が自由通貨になれば、一時的に人民元安になる
・ 10~15年後に米中戦争は免れない
・ アメリカ大統領選の翌年は要注意
・ なぜバフェットは日本の商社株を買ったのか

第三章 原油安、水や食糧危機……商品はどうなるのか

・ 金、銀はバブルか? これから買っても大丈夫か?
・ 原油価格が再びマイナスになることはあるか
・ 中国人の大量消費で代替肉にチャンスはあるか

第四章 コロナで活性化する新たな市場

・ GAFAは投資先としては有望か
・ 仮想通貨で政府に反逆する人々は勝利するか
・ 日本は増税しても借金は減らない

第五章 大転換する世界で勝ち抜いていく

・ 15年後の世界で、変わるものと変わらないもの
・ ジャパニーズドリームは再び作れるか
・ 金融リテラシーが低いのは日本人だけではない
・ アジアの教育は欧米より素晴らしいか

ほか 
(目次から主な小見出しを抜粋)

萌さん 目次を見て、カッキーは何に興味を持った?

カッキー そうですね、仮想通貨については何て言っているんですか? 実はこの前、ビットコインをちょっと買ったんですよ。

萌さん 今すごく値上がりしているからね。ロジャーズはブロックチェーンという仮想通貨の技術については評価しているけど、今の仮想通貨については懐疑的ね。

カッキー どうしてですか? こんなに値上がりしているのに。

萌さん それこそがバブルの予兆だって。みんなが投機的に買っている結果が今よ。今の仮想通貨は政府の支配下にないけど、仮想通貨が通貨として成功したら政府が仮想通貨を支配するだろうって。ロジャーズの言い方だと、「政府は銃と法律を持っているので逆らえない」ってね。政府の裏付けがない通貨は難しいってことじゃない。「価値はいつかはゼロになる」だってさ。

カッキー えーっ、それは大変だ! すぐに売らなきゃ!

萌さん うろたえないでよ! そういうモノの見方もあるって話よ。

カッキー それはそうですけど、エラい人に言われると信憑性がありますよね。

萌さん まあねー、実績がある人だからね。でも、中国経済が来るとだいぶ前から予測していた人で、全体的に中国びいきな面があるの。だからアンチな人もそこそこいるのよ。

カッキー えっ、そうなんですか。

萌さん ただ、「鎖国的政策を選択した国の経済は低迷する」という歴史観も持っている人だから、今の中国の政策にはちょっと懸念を抱いていたりするんだけどね。

カッキー へえー。

萌さん あと、「国の借金が増えるとインフレになる」といったオーソドックスな考え方がロジャーズ流だから、できたらまったく逆の立場の投資家の本とかも読んだほうがいいわよ。ま、これ一冊でも、世界的な投資家はこういったことを考えて投資をしているんだな、といった思考のプロセスを知る勉強にはなるんじゃないかな。

[『TACNEWS』2021年3月号│連載│萌さんとカッキーの読書室]

著者プロフィール

山田真哉(やまだしんや)

公認会計士・税理士。TAC梅田校出身。中央青山監査法人(当時)を経て、現在、芸能文化税理士法人会長。株式会社ブシロード等の社外監査役。著書に『女子大生会計士の事件簿』シリーズ、『世界一やさしい会計の本です』『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』等。

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