元公務員のTAC講師によるコラム 元外交官が解説!

◎講師紹介
横生 健(よこお けん) 講師

元官僚。外交官として、ヨーロッパ、アメリカ、アフリカ他で活躍。外務、防衛の他、経済産業省、国際機関、地方自治体などの職務を経験。
現在はTAC・Wセミナーの国家総合職、外務専門職講座で面接、官庁訪問対策を中心に講師として活躍中。

「外交官」はとても興味深い仕事です。一生をかけて遂行する価値のある職務です。たくさんの醍醐味があります。せっかく仕事をするのであれば、挑戦していただきたい職業です。

一体どんなふうに遣り甲斐があるのか、私自身の外交官としての経験や見聞きしたことを踏まえてご紹介しましょう。

外交官の遣り甲斐は数多くあります。ここでは代表する5つの醍醐味をご紹介します。

  1. 日本外交を担う醍醐味
  2. 国全体を俯瞰する醍醐味
  3. 日本を代表する醍醐味
  4. 専門を極める醍醐味
  5. 文化を巡る醍醐味

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①日本外交を担う醍醐味

 ご存じの通り、一国の代表として外交任務を行うのが「外交官」です。外務大臣の監督の下に外国に駐在または派遣されて、外国との交渉事務を担当する公務員です。

 世界に飛び出して仕事をします。そもそも私達の今いる「世界」って?

――復習してみましょう。国内には中央政府があって国民は法律を守って生きています。法に違反すると、警察や裁判所が登場して、最終的には強制力をもって法に従うようにしてもらいます。

「世界」は、中央政府によって統治されていません。それぞれの国が自国民の安全と繁栄に責任を持ち、独立して動いています。国際連合や国際法があっても、合意をした国が従うのが基本原則です。

各国が武力で争うことなく安全に共存するためには、各国間の調整と協調が必要です。そのためにする「外交」を担うのが「外交官」です。

 では、日本外交の目的は何でしょう?第一に、日本の平和と繁栄、日本国民の安寧や幸福など、日本の国益を確保することです。

第二に、自由、民主主義、人権、法の支配など普遍的な価値に基づいた国際秩序を発展させることです。どの国も一国だけでは国益を守れませんので、それぞれが国益を守れる国際環境を整備するのです。

外務省に入って「外交官」を目指すのは、日本の国益を守り、普遍的価値に基づく国際秩序づくりに参画したい人達です。自分の家族を守りたい、親戚や友人など大事な人が幸せに暮らしてほしい、当然です。

外交官はさらに国民全体の幸福を考えて外交を担うという醍醐味があります。それだけの使命感と目的意識が求められるとも言えます。

②国全体を俯瞰する醍醐味

 外交官として海外に派遣される前提として、皆さんは外務省に入省して外務公務員になります。国家公務員の一員です。

 「外交は内政の延長線上にある」といわれます。国内の利害や意見をまとめて、日本政府として外国との交渉を行うことになります。足元がばらばらでは、それこそ足元を見られて交渉はできません。

外務省は、職務の特質上、国内の総合調整を行うことが多くなります。例えば、経済分野の外交を進めるにしても、経済の各分野、農業、製造業、観光業など、必要に応じて幅広い調整が必要になります。時には環境や社会面の利害も踏まえて、日本全体を俯瞰した経済外交を推進します。

 これが外務省は調整官庁とも言われる所以です。常に日本全体を考える醍醐味があります。バランス感覚が求められます。

③日本を代表する醍醐味

 外交官は、大使館や総領事館といった在外公館に勤務します。あなたは、書記官、参事官、大使などの肩書を問わず、それぞれのレベルで日本の代表です。相手政府と交渉する際は、「日本政府」の代表として行動します。あなたの発言が政府の声になります。

 さらに、個人としても「日本人」の代表と見られます。海外にいる日本人は、多かれ少なかれ日本人の代表のようになりますが、日本政府の代表機関である大使館にいるあなたは代表としての色彩が一層濃くなります。日本/日本文化に対する造詣を深くして、日本を代表する醍醐味を感じます。

④専門を極める醍醐味

 外務省に入省して外交官として活躍する中で、あなたは専門家として極めることになります。外交の専門家であるのはもとよりですが、それぞれのキャリアを通じて専門性を磨きます。

 特に、外務省専門職の場合は顕著です。まずは言語の専門家になります。一般性が高い英語やフランス語はもとより、特殊性の強い言語ではなおさらです。

例えば、ハンガリー語に堪能な日本人上位何人かの仲間入りをするでしょう。努力次第で、日本で最もラオス語に堪能な人になるでしょう。


言語の習得は、当該国や地域の専門家につながります。タイの専門家、アラビア語圏の専門家など。日本で最もエジプトに詳しい人になるといった具合です。

 事項分野も同じです。国際条約、開発協力、軍縮、広報文化など、研鑽次第で各分野の第一人者になる道が開かれています。「専門官」の制度があり、極めれば正式に特定分野の専門家として認定されます。

⑤多様な文化を巡る醍醐味


 外務省に入省して外務公務員として本省勤務、「外交官」として在外勤務に従事していきます。大学を卒業して入省、定年退職するまで、長ければ40年以上のキャリアです。仮に半分としても、在外で20年以上勤務します。1か国に3年とすると、7~8か国で勤務することになります。

 旅行や出張の短期ではなく、その土地に長期に暮らし、文化に浸り、地元の人と付き合いながら職務を遂行していきます。多ければ8か国の違う文化を経験するわけです。日本文化をしっかり土台にしながら、世界中の文化を巡り巡りながら外交活動を行います。一度の人生で、何か国分もの人生を生きるーそんな自分を想像するとウキウキしませんか。異文化をまたいで仕事をする醍醐味があります。

 外交官には、数多くの醍醐味がありますが、今回は5つにまとめてみました。●日本の平和と繁栄および普遍的価値に戻づく国際秩序を構築するために日本外交を担う、●日本の代表として、●高度な専門家として、●国全体を俯瞰して総合調整しながら、●多様な文化を巡り、「外交官」として活躍するのです。

 折角の人生です。 「外交官」として、何人分もの充実した人生を生きるのは如何でしょうか。

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