実務補習レポート01|金井秀悟 さん
中小企業診断士として登録するためには、第2次試験終了後に行われる実務補習を突破する必要があります。
このページでは、実際に実務補習を行った方の詳細なレポートを紹介します。
実務補習レポートを送っていただいた方
「実戦力を養っていくプログラム」
金井秀悟 さん
(2020年1月取材)
中小企業診断士講座 デジタルパンフレットを閲覧する
実務補習のスケジュール、グループ構成
(1) 実務補習のスケジュール
① 実務補習のコース
実務補習は5日間と15日間の2コースがあります。
私は1日も早く中小企業診断士になりたかったため、2018年12月25日の合格発表日に15日間コースを申し込みしました。年に1回、2~3月のみに開催されます。
※アドバイス
2次試験合格発表直後という事もあり、応募者数は多いのですが、応募可能な人数は指導員である中小企業診断士数や訪問可能な実務補習先数に左右されるため、15日間コースを希望する場合は早めの申し込みが必要となります。
②15日間コースの構成とメリット、デメリット
15日間コースは5日間×3社を6週間(2週間×3)で駆け抜けるコースとなります。
東京地区の場合、平日が7日と土日祝日が8日間で組まれます。
私は基本的には1週目の金曜、土曜、2週目の土曜、日曜、月曜となり、初日と最終日が顧客訪問に充てられるため平日となりますが、1社目の1週目は木曜、金曜となり、木曜、金曜が充てられます。
その結果、1回目のみが平日が3回、土日祝日が2回でその他は(これは1社目の初日は実務補習の運営を担う東京都診断士協会からの説明会が午前中に行われるため、顧客の所在地によっては都心からでは訪問できないためであると思われます。その場合、2日目の訪問となります。)
メリット:知識、意欲が高いうちに)最短で登録できる、指導員(ベテラン診断士)の指導が受けられる、15日間同じメンバーなので、絆が深まる
デメリット:期間中の仕事との両立はかなりきつい、15万円+αの費用が必要(懇親会、移動交通費)、7日ほど平日の日程がある(有給休暇の取得が必要)
③1社(5日間)毎の流れ
訪問企業が指導員の顧問先(≒顧客)である事が多いため、指導員より訪問1週間前に、診断方針、企業情報(財務諸表含む)、経営状況や認識している経営課題、中期計画を入手し、各自業界調査や企業分析を行います。
初回は初日にリーダーを決め、役割を分担しました。役割は3回とも経営戦略、マーケティング、組織・人事、生産・技術、財務の5つで毎回担当を変更しました。
リーダーが経営戦略を担当する事で、診断の方向性を決定しました。2回目以降については、5日目終了後に次回の顧客情報を入手し、役割を決定、事前準備をしました。
初日の午前中は初回を除き、事前準備した内容を含めた認識の擦り合わせ、とヒアリング内容の確認をします。午後は顧客所在地に移動し、パート毎のヒアリングを行います。
その後、懇親会を兼ね、指導員とメンバーで反省会を行います。反省会で確認した内容を振り返り、追加質問すべきものを列挙し、解散後、リーダーからメールを送信します。
2日目はヒアリング結果のまとめ、経営環境分析、経営課題抽出、自主学習期間の課題確認を行います。
2日目終了後、3日目までは約1週間の自主学習期間となります。この間が重要で、Dropboxを活用し、ヒアリング記録のまとめと共有、診断報告書に挿入する「Excel資料」の作成、業界の二次データの取得、診断報告書本文の見出し、提言、文案等を作成していきます。
この期間に個々で作成した資料も個人の思い込み等によりズレてくるため、確認のために水曜日に会議室を借り、作成内容の相互確認と担当ごとへの調査要望を行いました。
この時点での調査・準備・検討が、後半の「診断報告書」の内容や進行に大きく影響してきます。また、指導員の先生もDropboxにアップされている資料へのコメントを適時頂きながら進めました。
3日目は各自の成果物確認・指導員やメンバーからのフィードバック、作成内容を受け、診断報告書の整合性統一、その後の各自作業内容の確認を行います。
4日目は診断報告書の読み合わせを行います。この段階で、班によっては指導員の先生から大幅な修正(ちゃぶ台返し)が入る事もあるようです。
各パートで指摘を受けその修正に時間を要します。また、終わった人が資料の統合作業を行い、各パートで作成したWordファイルの体裁(インデントや図表ナンバリング、単語等)を揃えます。
事前にルール決めしているものの、統合する事によって、行のズレ等が明らかになったり、ズレが発生したりするのでこの作業にも時間を要します。
また、1、2社目はプレゼン用にパワーポイントの資料を作成しました。これも合わせて作業終了後、印刷サービスチェーンへ印刷・製本を依頼します。
5日目は午前中に製本した資料の確認を行い、協会へ提出をしました。その後はプレゼン練習を行いました。限られた時間ですが、社長に伝えたい事は何なのか、どうすればより伝わるのか、指導員の先生のアドバイスを受けながら時間ギリギリまで練習しました。
午後は顧客先へ移動し、報告会を行います。社長や取締役は熱心に耳を傾け質問もしてくれました。理論はもとより、メンバーの提案内容については、喜んで頂けました。報告会終了後は打ち上げを行いました。
※アドバイス
- 初回のヒアリングで聞く内容の絞り込みと回答内容の想定を適切に行っていないと、役割毎に聞いた内容のアンバランスや重複、漏れ、聞く必要のない質問が発生し、診断の方向性も絞り込めなくなり、診断報告書の質が低下するため、事前準備が重要です。
- 基本的に初日と最終日は懇親会があります。ただ、先生によっては毎日開催の場合もあります。その後の中小企業診断士としての生活も懇親会が多く、ここで人間関係や情報を得る場となるので、積極的な参加をオススメします。
- 先生によっては4日目にちゃぶ台返しのような事を行う先生もいます。4日目の夕方にお葬式会場のような状況でシーンとしている班を2班見ました。先生の意見を反映した資料にいかにするかが大事です。(とはいえ、なんでも聞くものではありません。)懇親会を毎日される先生は毎日参加し、コミュニケーションを図り信頼関係を醸成する事をお薦めします。我々は会議室でも一番活発な議論が行われ、作り込みの深度については指導員からも褒められました。
- 班内での取組に手を抜いている様子が見られたりすると、先生がちゃぶ台返しをしたりするケースがあると聞きます。プロの先生のお客様であるため、恥ずかしい仕事(成果物)は出せないためです。他班ですが、メンバー間で愚痴を言っているのもトイレで聞きました。15万円を支払いますが、学校ではなく、あくまでも中小企業診断士としてのビジネスの最前線になります。真剣に、最善を尽くす事で成果物のできが変わります。3社とも幸いな事にありがとう、と社長から言われた一言が今でも忘れられない思い出になっています。
- 2~3月はインフルエンザを含めた風邪が流行する時期になるため、メンバーが病欠したり、突発事象により欠席するケースが発生します。欠席は脱落という事になるため、ご自身の体調管理はもとより、メンバーが脱落した場合は、その対応をどうするか、という課題が発生します。
(2) グループ構成
原則、15日間のコースは3回とも班のメンバーは変わりません。また、基本的には居住地の近いメンバーが集められ、居住地を管轄する協会(支部)の指導員がつく事が多いのですが、私たちの班は一人も管轄協会(支部)の在住者はいませんでした。
メンバーは5人全員がサラリーマンかつ2次試験合格直後での実務補習となり、モチベーションが高いメンバーとなりました。さらに4名が40歳前後、1名が30歳前後であり、世代も近いため気遣いなく、進める事ができました。
また、15日間コースについては、指導員も変わらない事が多いのですが、私の班は3回目に指導員が変更となりました。
※アドバイス
- 15日間コースの場合、班のメンバーが一番強固なつながりを持つ仲間となります。診断士としての登録後、助けてもらえる仲間となるため、補習中は真剣に取り組む事をお薦めします。メンバー間で、作業量にアンバランスが発生してきますが、リーダーもしくは指導員の差配が適切に行われるか、見守っているだけでなく、ヘルプを進んで行ってもらえるかでメンバー間の関係性が変わってきます。
- 基本的には指導員が中小企業診断士としての初めて、かつ深い接点となるため、そのまま所属される協会(東京の場合は支部)に所属し、その後の中小企業診断士活動のアドバイスをもらう事になるため、指導員との巡り合わせや15日間の取組は相互の印象作りともなるため、大事なものとなります。
実務補修での取り組み
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1社目
カーメンテナンスショップのフランチャイザー
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2社目
化学原料の塑性加工メーカー
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3社目
電設業
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1社目
組織・人事(同業他社比較や経営分析を行い、分析した強みを活かしたFCモデルの展開を提案しました。)
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2社目
生産・技術(機械の稼働率を分析し、購入、廃棄の提案、生産性の可視化ツール導入による社員への情報共有と経営参加意識の向上を提案しました。)
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3社目
マーケティング(経営分析の結果、某大手電力会社の仕事が主体であり、利益率が高いため、既存営業の強化と、東日本大震災以降の自家発電需要の拡大を可視化し、自家発電市場への営業強化を提案しました。)
実務補修での収穫
終了後の感想と今後どう活かすか
中小企業診断士合格から登録までの流れが基礎知識の習得、2次試験で知識の応用力を養い、実務補修で実際の企業への診断を通じ実践力を養っていくプログラムになっていることを実感し、総合診断の体験が有意義なものとなりました。
15日間コースを共にした班員とは、年齢が近いこともあり、定期的に会い、都度相談する中となっています。その中で各自の診断士としての活動や、仕事での取組みやステップアップしていく様子等を情報交換することが、刺激になると考え、年次で診断士としての活動の振り返りを行うようにしました。