将来の選択肢|現在の企業先で活かす|宮本 由美子 さん

取締役として管理部門の統括と経営のサポートをし、
健康経営の導入など、診断士で学んだことをフル活用

Profile               

お名前 宮本 由美子 さん
現職 株式会社ビット 取締役
中小企業診断士、キャリアコンサルタント
略歴 2019年度。中小企業診断士試験合格
2022年1月、中小企業診断士登録
大学卒業後、外資系不動産会社入社。
夫の転勤に伴い沖縄移住。
その後、神奈川県に戻り地元企業で人事経理業務に従事。
2016年5月、現在の株式会社ビットに人事担当として転職。
中小企業診断士取得後に、管理部門責任者を経て、
2023年に取締役に就任。
中小企業診断士(以下、診断士)をめざした経緯を教えてください。

 新卒で外資系不動産会社に入社し、夫の転勤で沖縄に移住しました。その後、神奈川県に戻って地元企業で人事経理業務担当として研修企画や人事考課制度設計など、幅広い経験を積みました。そして2016年に株式会社ビットに人事担当として転職しています。
診断士を知ったのは、ビット入社当時お世話になった管理部長が、エンジニア出身で診断士を取得していたからです。エンジニアとしてエキスパートでありながら、経営から法務、財務まで非常に知識が豊富な姿を見て、診断士がどんなことを学ぶのか興味を持ちました。試験科目を見ると、財務からマーケティング、経営、情報システムとビジネスに必要な知識が幅広く網羅されていました。実務に役立つだけでなく、大変興味深い内容でしたので「いつか私も」と思いました。
 ただ診断士にはすぐに手をつけずに、人事と親和性の高いキャリアコンサルタントを優先して取得することにしました。2018年7月、キャリアコンサルタントの合格証が届いた翌々日に西日本豪雨が起きました。倉敷市真備町にある実家が全壊し、私は2週間地元に帰りました。そのとき、一瞬にしてすべてがなくなってしまう現実を目の当たりにして、「いつかではダメだな」と思い、すぐに診断士の勉強を始めました。

受験時代のエピソードを教えてください。

 1次試験のタイミングは、ちょうど自分の部署の人員が極端に減ってしまった時期と重なりました。私は自分の仕事、プラス人員不足分の仕事、その上リーダーとして実質的に管理部門を回していたので、社内の管理業務のほとんどを担っていました。平日は毎日帰りが遅いうえ、朝は4時半に起きて朝練に行く高校生の息子のお弁当を2食作っていましたので、平日は一切勉強できません。そこで金曜の夜には何としても仕事を終わらせて、土日に集中して勉強しました。TACで朝9時からビデオ講座を1コマ受講し、その後3時間自習室で復習。15時からまた次の1コマと3時間の復習をし、21時すぎにTACを出て帰宅するというTACで1日12時間を過ごす週末を送りました。
 週末だけなので学習時間はギリギリですし、前週の学習内容を覚えていないことも……。そんな状況でしたが、自分を奮い立たせてなんとか前に進み、GWまでには1次試験の講座を見終えました。後はひたすら問題集を繰り返し解いて覚えました。すると直前模試でB判定が出たのです。ここまできてようやく「後1ヵ月でなんとかなるかな」と手応えを感じました。
 2次試験の時期は人も採用できて仕事が落ち着いてきたので、平日もTACの自習室で夜21時半まで勉強しました。でも2次試験は論述なのでビデオ講座で1人の学習はとにかく「辛い」の一言で、非常に孤独でした。20点未満の答案が返却されて、心が折れそうになったこともあります。模範解答をすべてインプットして「模範解答通りに書けば大丈夫」と自分を信じるしかありません。2度と受験勉強はしたくなかったので、「絶対に今回で終わらせよう!」と、必死の思いで勉強に集中した結果、2019年に1年で合格できました。

診断士で学んだことは現在の仕事にプラスになっていますか。

 診断士取得をきっかけに、社内での業務内容が激変しました。入社当初は人事の仕事をメインに担当していましたが、診断士合格後は財務も担当するようになりました。現在、取締役として管理部門の責任者を任され、人事、財務、経理、法務、情報システム全般を見ています。会社の財務諸表を見たり、取締役として経営会議の仕切りを任され、診断士で学んだ知識を大いに活かしています。
 診断士の学習では経営や財務だけでなく情報システムも学びます。その知識が活かされ、社内ネットワーク構築など情報システムのメンバーとも共通言語で話ができるようになりました。さらに経営法務で学んだ著作権や商標登録の知識を活かし、契約書のリーガルチェックや会社の商標登録も担当しています。
 取締役就任後は、経営的役割も担うようになりました。管理部門だけでなく経営全体のかじ取りをサポートできるようになったのは、診断士を取得したからに他なりません。取締役になってまだ1年。今後も当社社長と協力しながら、安定して利益を生める会社経営の基盤構築に努めたいと考えています。

診断士としての活動について教えてください。

 社内で取締役としての責務をきちんと全うしながら、平日夜と土日のできる範囲で診断士として積極的に活動しています。
 現在、神奈川県中小企業診断協会の「健康経営支援プロジェクト」と「ビジネスモデル研究会」に所属し、研究活動をしています。健康経営を自社で取り入れたところ、健康経営での知名度が高まり、講演に登壇して会社の取り組み事例を紹介する機会も増え、健康経営を通じて自社の間口が広がっています。
 また副業として、国のものづくり補助金や事業再構築補助金などの補助金申請のために事業計画書を作成し、採択後の交付申請や実績報告も担当しています。そこで異業種の経営者との交流が増え学びを深めていることも、自社に還元されています。現在は診断士メインで活動していますが、キャリアコンサルタントの資格もありますので「診断士+キャリアコンサルタント」の人事経営コンサルタントとして経営者を支援していきたいと考えています。

診断士をめざしている受験生にアドバイスをお願いします。

 診断士を取得して、私は自分の知識に自信を持てるようになりました。経営者だけでなく、技術者も営業も管理部門も、社会人であればどのような職種でも活かせる要素が詰まっているのが、診断士の学習です。実務で役立つだけでなく、診断士の世界はとにかく広く、合格後は今まで知らなかった世界がどんどん広がります。診断士は頭が良くないと合格しない資格ではなく、素直に勉強に取り組んだ人が合格できる資格です。興味を持たれた方はぜひチャレンジしてください。

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