日本CFA®協会 会長インタビュー CFA®は金融業界の“グローバル・パスポート”
グローバルに活躍する人材への第一歩となります。
出川 昌人氏
一般社団法人日本CFA®協会会長
大学卒業後の5年間はアメリカのブルッキングス研究所などで政治と経済の研究に従事。1985年からモルガンスタンレー証券の日本株アナリスト、1993年からロンドンのJPモルガンアセットで日本株のファンドマネージャーなど、30年のキャリアで転職を5回経験。最後の仕事はブラックロック・ジャパンの代表取締役社長として合併後の立て直しに従事し最高益を達成。いったん引退はしたものの、現在は5社のシニア・アドバイザーなどとして日本での業務に従事、その傍らで日本CFA協会会長を務めている。
*日本株のアナリスト、ファンドマネージャーなどを務める
~出川会長のキャリアについて教えてください。~
大学卒業後5年間、社会勉強をする機会があり、うち2年間はアメリカのブルッキングス研究所に在籍しました。その期間が終了すると私は27歳。社会に出てきちんと働かなければ、と考えているとき、東京証券取引所の会員として外資系証券会社が初めて日本に参入するための募集がありました。それまでやってきたのは、エンジニアリングとエコノミクス。畑違いですが応募したところ幸い採用され、そこから10年弱、日本株のアナリストを担当しました。その後、JPモルガンの運用部門がロンドンに日本株のファンドマネージャーを置きたいとヘッドハントされ、家族でロンドンへ。家族は以後ずっとロンドン在住です。その後、日本の山一投資顧問を買収したフランスのソシエテ・ジェネラルの運用会社に移り、CIO(Chief Investment Officer)と後日社長を務めました。そしてブラックロック・ジャパンの代表として立て直しを行い、収益を回復させて5年目には最高益を出すことができました。そこで退職してロンドンで2年間休養し、現在は縁あって5 つの会社でシニア・アドバイザーとして日本での業務拡大のお手伝いと、日本CFA®協会会長などのボランティアを務めています。
*2000年頃にCFA®資格取得
~CFA®資格取得の経緯について教えてください。~
ファンドマネージャーとして主にアメリカのクライアントに伺うと、CIOが座る背後の壁にはCFA®の認定証を掲示してあることが多々ありました。その度にいつか自分も取得して、同じ土俵にのぼらなければ、と思いました。
実際に取得したのは、ロンドンでの日本株ファンドマネージャー時代、2000年頃です。CFA®はLevel1、Level2、Level3の合格が必要です。当時は試験が5月末の年1回でしたので最短で3年かかります。私はLevel3を1回落としているので、都合4年かかりました。CFA®の課題図書(教材)は非常に多くあり、とてもすべてに目を通す余裕はありませんから、要点を抽出したサマリーで学びます。私はアメリカにある、いわばTACのような会社の参考書を利用して勉強しました。
*金融業界の“グローバル・パスポート”
~CFA®試験の特徴について教えてください。~
CFA®は金融業界の“グローバル・パスポート”です。取得していると運用のプロであることは誰も疑いません。
MBAとCFA®はよく比較されますが、学ぶ内容を見てみると、CFA®は投資や運用にフォーカスした全世界共通の試験を実施しています。一方でMBAは、各大学によって学ぶ内容、やっていることが違います。同じMBAでもどこで学んだかによって、持てる知識に違いが生まれます。CFA®はグローバルで1つしかない資格であることが、大きな特徴といえます。
*グローバルな就職・転職においても非常に有効な資格
~CFA®資格取得によるメリットについて教えてください。~
まず日本だけでなく、世界中の金融業界に通用する資格を手にすることになります。同様にCFA®を取得している世界のプロフェッショナルたちと話す際、どんなに厳しい質問をされても、なぜその質問をしてくるのかがわかります。その背景を理解した上で、自信を持って的確に答えることができます。それはCFA®を取得するために同じ勉強をしてきたからです。
また、私にもヘッドハンターからよく連絡が来ました。やはりCFA®を取得したことは、真面目に取り組んできた証明として認識されています。運用知識も全部学んでいるという証明ですから、就職・転職においては非常に有効な資格になります。
*CFA®資格は資産運用立国に必須な金融人材
~日本におけるCFA®資格の位置づけについて教えてください。~
日本政府は政策の柱の一つとして、資産運用立国を打ち出しています。運用の世界はグローバルですから、資産運用立国で一番必要なものは、グローバル人材です。世界のどこへ行っても活躍できる金融のプロフェッショナルが必要とされており、CFA®の資格保持者は資産運用立国で必要とされる人材に合致しています。海外からそうした人材に来てもらう必要がありますし、日本でも生み出していく必要があります。
金融、特に運用の世界に飛び込もうという人には、ぜひCFA®にチャレンジしてほしいですね。
*大学生向けのリサーチチャレンジを実施
~協会ではCFA®普及のためにどのようなサポートを行っているか教えてください。~
日本CFA協会では、大学生向けのリサーチチャレンジの国内大会を実施しています。約20の大学から1チーム3~5名で参加してもらい、学生たちは分析対象企業の業績を調査して発表します。そして英文での投資推奨レポートを提出してもらい、厳正なる審査で上位8チームが決勝に進出。決勝ではレポートに沿って10分間の英語でのプレゼンテーション、及び運用業界の専門家5名で構成される審査員による10分間の質疑応答を行い、優勝チームが決まります。大会は既に16回を数え、参加大学生には資産運用業界や分析対象企業に就職した学生が多く、CFA®の受験を考える学生も大勢います。
また、CFA®受験生のための講座も用意しており、受験勉強のお手伝いをしています。
*CFA®は可能性が無限に広がる資格
~これからCFA®資格を目指す方へメッセージをお願いします。~
現在、日本にいるCFA®は約1,800名、2024年に90名ほど加わりましたが、まだまた社会のニーズに応えられるだけの人数ではありません。金融の世界で活躍したい、グローバルに仕事がしたい方にとって、CFA®資格は大きな武器となって、皆さんの未来を切り開いてくれます。一言で言うと、CFA®は個人の可能性が無限に広がる資格と言っていいでしょう。極端な話しですが、CFA®があれば世界中どこでも働けます。CFA®を持っている人と持ってない人を比較すると、実力にものすごい違いが出ると思います。私がCFA®を取得したのは40歳過ぎでしたから、ちょっと遅かったですよね。今考えると、もうちょっと早めに取得していればよかったかな、と思います。CFA®に興味がある方、世界を舞台に働きたい方など、大勢の方のチャレンジをお待ちしています。